社会|2025年3月24日掲載
実力派のペリオドンティスト4名が登壇
ペリオな会が開催
さる3月20日(木)、日本大学歯学部創設百周年記念講堂(東京都)において、ペリオな会が開催された。本会は片山明彦氏(東京都開業)、山口文誉氏(神奈川県開業)、岩野義弘氏(東京都開業)、斎田寛之氏(埼玉県開業)という同世代の4名のペリオドンティストによって結成された会である。本会は2023年に開催された第9回日本国際歯科大会(クインテッセンス出版主催)において、演者であった4名が意気投合したことから、片山氏の提案で企画された。当日は、歯科医師、歯科衛生士をはじめとした約200名の歯科関係者が参加し、盛会となった。
午前は4名がそれぞれ講演を行った。以下に演題および概要を示す(講演順)。
1)「Supra-crestal periodontal regeneration」片山氏
片山氏は歯周組織再生療法について講演を行い、骨移植の際にデコルチケーションを行うか行わないかの判断や、結合組織移植の可能性などについて症例とともに解説した。また、ルートトランクの長さと根分岐部病変の進行の関係性を考察したうえで、治療の際には角化歯肉の幅や厚みだけでなく、ルートトランクの長さも考慮することが必要とした。さらにフラップデザインについては、可能であれば乳頭部を切らないフラップデザインを考慮することが大切とした。
2)「Clinical Periodontal Microsurgery」山口氏
山口氏はブラックトライアングルの発現率、要因、改善方法をまとめた後、歯間乳頭の再建について、(1)天然歯-天然歯間、(2)天然歯-ポンティック間、(3)インプラント-インプラント間、(4)下顎前歯の複数に及ぶブラックトライアングルの4タイプの症例を自身の手技動画とともに提示した。そのなかでもっとも難度が高いとされる③インプラント-インプラント間の歯間乳頭再建については、粘膜の厚みと高さには一貫した相関関係があるとの文献を示し、“粘膜の厚みを増やすことで高さが出てくる”というポイントを強調した。また、歯間乳頭再建においては乳頭への血液供給が重要であると述べ、血液供給を考慮した切開デザインを考えることが重要とした。
3)「ペリオの愉しみ~Partial-thickness Flap~」岩野氏
岩野氏は部分層弁の切開を行うときがペリオの愉しみだと語り、部分層弁を用いた歯周外科手術の症例やテクニックを披露した。そのなかで、2つの歯肉弁を同一部位に形成する(部分層弁の形成後に、さらにその下層の骨膜を剥離して全層弁を形成)歯肉弁を“double thickness flap”と名付け、その形成術式やそれを用いた歯肉弁根尖側移動術の症例を提示し、その有用性について説明した。また、氏が考案した有茎弁歯肉移動術を用いた根面被覆術の手法である“bidirectionally positioned flap surgery”についても解説した。
4)「生体の治癒力を活かした歯周治療」斎田氏
斎田氏は生体に関する3つのキーワード(1)防御機能(免疫、炎症反応)、(2)適応能力、(3)組織修復・再生機能を基に講演を行った。そのなかで、歯周炎における炎症は生体が治ろうとしているサインだと述べ、そのサインを見逃さずに適切な対応をすることの重要性を示した。また、生体の治癒力を利用した歯周治療として、歯の自然挺出をうまく利用することで動揺をコントロールし、歯肉の付着を獲得した症例を供覧。さらに症例の中では、患者のもつ歯周病の個体差に注目して斎田氏が自身のメンターである千葉英史氏(千葉県開業)の意図を汲んで考案したという“歯周組織の回復力・治りやすさ予測チャート”を使用し、歯周病症例の難易度を予測した。
午後は「歯の保存の今、そして未来」と題して講演と座談会が行われ、司会は大月基弘氏(大阪府開業)が務めた。前半は斎田氏と岩野氏が“歯の保存”をテーマに、後半は山口氏と片山氏が“フラップデザイン”をテーマに講演し、その後、演者4名によるディスカッションが行われた。ディスカッションでは、抜歯機序のフィロソフィーや意図的再植、歯の連結、ホープレス歯に対する勘所、大臼歯部のフラップデザインなど、さまざま話題に対して活発な議論が交わされた。
「ペリオをベースに歯科界を盛り上げていきたい」「ペリオの魅力を伝えていきたい」と演者それぞれのカラーで“ペリオ愛”が語られた本会は、盛会のうちに閉幕した。