2022年7月号掲載
次世代の卒後教育の充実を目指す臨床家
歯科界の卒後教育において、学閥や流派といった師弟関係が一部色濃く残っている研修会・セミナーがあるなか、小田師巳氏(大阪府開業)が主宰する若手歯科医師の育成を目的としたセミナー(iCEED:Institute for Clinical Expertise and Evidence in Dentistry)が近年人気を博している。氏の目指す卒後教育の場とは――。そして、「次世代の先生方とともに学びたい」と語るその真意をうかがった。
小田:近年の歯科医療は飛躍的な進歩を遂げ、数多くの有益な臨床エビデンスが構築されてきています。一方で、玉石混交の情報過多の時代のなかで取捨選択すら非常に困難になっています。それは勤務医をはじめとするスタッフ教育においても同様であり、全分野を院長だけで指導することにつねづね難しさや厳しさを感じています。
もちろん、良好な師弟関係やスタディグループの仲間で学べることは喜ばしいことですが、若い先生方の考え方は昔と比べてだいぶ変化してきています。私自身が外部講師として担当させていただくなかで、今の時代に即した新たな卒後教育の必要性を感じ、そしてそのような受け皿となる卒後教育の場をつくるべきではないかと考えていました。
そこで、私自身が教えを乞いたいと思える第一線で活躍する各分野の同世代の講師陣をお招きし、スタディグループの垣根を越えてエビデンスに基づいて学べる若手向けのセミナーコースを2020年に開設させていただきました。コロナ禍で始めたWebを活用した講義(振り返り視聴もあり)も追い風となり、おかげさまで定員枠を大幅に増員するほど大好評をいただいています。また、関連するハンズオンコースも本年度はすべて満席の申し込みをいただいています。
さらにこれまでのハンズオンコースは、貸し会議室などにて開講していましたが、受講生が快適にコースを受けることができるように自前の研修室も開設いたしました。当ハンズオンコースでは、臨床ですぐに実践できるように豚顎実習にこだわっていて、貸し会議室では実施ができない場所も多かったのですが、当研修室ではいつでも豚顎実習が行えます。また、インプランターも受講生の人数分用意していますので、待ち時間なく実習手技を習得していただくことができます。加えて、ハンズオンコースで使用する歯科医療器具については、講師自身が実際に使用している器具以外は使用しないというポリシーを遵守していることも、受講生の満足度が高い理由の1つかもしれません。
永続性のある歯科医療を患者さんに提供すれば、結果はおのずとついてきます。iCEEDの受講生がそのような知識と技術を習得でき、他の先生方に紹介したくなる魅力的なプログラムで、エビデンスに基づいた歯科医療の本質を学んでいただけるような場を提供します。そして受講生、講師、運営者の3者がWin-Win-Winの関係になるような卒後教育を目指します。