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2024年3月号掲載

第22回国際外傷歯学会世界大会の大会長

外傷歯の患者さんへの還元と外傷歯学の発展に貢献したい

 きたる7月12日から15日の4日間、第22回国際外傷歯学会世界大会(WCDT2024)が日本で開催される。大会長を務める泉 英之氏(滋賀県開業)は、歯髄と歯の保存に関する執筆や講演が多数あり、国際外傷歯学会でも活躍している。本欄では、外傷歯治療の普及啓発を目指して国内外で活動する氏に外傷歯学への想いと今大会についてうかがった。

:歯科医師の先生方は、外傷歯を治療する機会はどれくらいあるでしょうか。おそらく1年間のうち数症例という先生が多いと思われますが、その時の診断と治療方針に迷われた経験はないでしょうか。もし、ご自身のご家族が外傷で歯髄や歯の保存の可否の判断を迫られたときに自信をもって治療できますか?

 外傷歯は特に若年者の前歯部に生じるため、その臨床判断は患者さんの生涯の審美と機能を左右します。外傷歯の知識と技術があれば、患者さんの人生に貢献できるかもしれません。たとえば外傷による歯根破折はどのように対応されているでしょうか。もちろん歯を残すことにこだわっている先生方はいるとはいえ、私の感覚ではその多くが抜歯されているように感じます。そして抜歯後の治療法としてブリッジやインプラントなどがありますが、ブリッジは歯髄壊死のリスクがありますし、インプラントは特に若年者において低位咬合が生じることが研究データで明らかにされています。しかし、もし外傷歯の知識があれば、ほとんど症例で迷いなく歯も歯髄も保存を選択することができると思います。

 また、日々の臨床においてインプラントはするけれど自家歯牙移植はしていないという話をよく聞きます。しかし、世界(特にヨーロッパ)では自家歯牙移植が再注目されています。なぜなら、インプラントにはインプラント周囲炎、低位咬合やオープンコンタクトのリスクがあるからです。意外に思われるかもしれませんが、自家歯牙移植は本学会の重要なテーマの1つであり、自家歯牙移植の治癒の原則は外傷歯学からフィードバックされたものだからです。

 外傷歯や自家歯牙移植は、う蝕治療とは異なり毎日行う治療ではないため、その知識と技術を学ぶ機会が少ないかもしれませんが、今大会はその知識と技術を学べるたいへん貴重な国際大会です。ふだんは日本で聞くことのできない海外演者の講演や日本の著名な先生方の講演が多数あり、歯科衛生士セッションもあります。ご興味のある歯科医療従事者はぜひ、「第22回国際外傷歯学会世界大会」で検索してみてください。

 また、今大会は「ザ・クインテッセンス」誌との共同企画として外傷歯・自家歯牙移植の症例コンテストを企画しました。優勝者には賞金と同誌への論文掲載という副賞がありますので、歯科医師の皆様のご応募をお待ちしています。

 最後に、今大会をつうじて日本の外傷歯の患者さんへ還元していくことと、外傷歯学の発展に貢献できることを願っています。