社会|2024年12月2日掲載
吉川浩史氏、高岡亮太氏が矯正歯科と補綴の連携をテーマに講演
PROS Dental Academy、オンラインセミナーを開催
さる11月30日(土)、PROS Dental Academy(田中亮次代表)によるオンラインセミナーが開催された。
PROS Dental Academyとは、田中氏(静岡県勤務)が代表を務める、歯科臨床の実際をアカデミックかつ教育的な視点で情報提供するセミナー。今回は、吉川浩史氏(大阪府開業)と高岡亮太氏(大阪大学)を演者に迎え、「拡大矯正後に改善できなかった不正咬合を矯正・補綴歯科治療でリカバリーした症例~拡大矯正の適応および禁忌症について~」の演題で開催された。
本講演において俎上に載せられたのは、幼少期に他院にて上顎の拡大治療と矯正歯科治療を行い、その後さらにⅡ期治療および拡大治療を行ったが、術後に上下顎前歯に歯根吸収をともなう前歯部開咬を呈し、咀嚼障害と審美障害を訴えている20歳、女性の症例。
吉川氏はまず、現在考えられている開咬の原因と、小児・成人それぞれにおける治療の概要を解説。そのうえで、本症例が医原性の開咬に至った原因が考察された。そして、矯正と補綴それぞれの視点からの本症例に対する両者のディスカッションポイントが示され、治療計画として最終的に下顎の矯正歯科治療および咬合調整を行ったうえでの、上顎前歯部の歯冠修復治療を立案したことが解説された。
その後は、高岡氏により歯冠修復治療の概要が示され、なかでも生活歯の支台歯形成時において、歯髄炎を予防するための形成量、テーパー角、歯軸を意識した形成デザインについてと、露髄や熱による歯髄壊死をいかに防ぐかについて、時間を割いて解説された。
矯正歯科治療と補綴治療は、ときに相互的に組み合わせることが非常に重要であるが、両者が同じ土俵で議論される場は意外にも少ないのが現状ではないかと考えられる。そのような現状において、本セミナーの意義は大きいと感じられた。