学会|2024年12月2日掲載
インターディシプリナリー・マネジメントの視点から矯正歯科治療の今とこれからを語り合う
日本臨床歯科学会東京支部2024年度第2回例会開催
さる12月1日(日)、赤坂インターシティコンファレンス(東京都)において、日本臨床歯科学会東京支部2024年度第2回例会(同学会東京支部主催、大河雅之会長)が開催され、約200名の参加者を集めた。
本会では矯正歯科治療をテーマに、前多啓博氏がチェアマンを務め、同学会最高顧問の山﨑長郎氏と国内外で活躍する矯正歯科分野のスペシャリストとして尾島賢治氏(すべて東京都開業)、Won Moon氏(韓国・亜洲大学教授)、宇津照久氏(栃木県開業)の4名による講演が行われた。
午前の教育講演1では、まず尾島氏が登壇し「アライナー型矯正治療における可能性と限界」と題して自院で現在主に用いている形状記憶型アライナーを紹介し、従来型アライナーとの治療プロセスの違い、口腔外科・補綴歯科との連携時の利点などについて解説した。続いて、山﨑氏が「Interdisciplinary Management of Ortho-Restorative Patient」と題し、矯正歯科治療と補綴修復治療の連携に不可欠なインターディシプリナリー・マネジメントの考え方から、治療目的の明確化、治療ゴールの共有など矯正歯科医と一般歯科医間でコンセンサスを確立するためのポイントを説いた。
特別講演では、Moon氏によるビデオ講演「AIとデジタル技術を用いた矯正歯科の新時代:限界を克服し、未知の領域を開拓するMSE、新世代のアライナーシステム、新しい舌側矯正装置」が行われ、氏が開発した上顎拡大装置MSEやMoon Alignerシステムを用いた難症例を供覧した。また、氏が開発中のAIサポートによる治療シミュレーションソフトウェア「Digital MSE Automation」の将来的な活用法についても紹介した。
午後の教育講演2では、宇津氏が「現代歯科医療における矯正歯科臨床の進化」と題して登壇した。氏は、矯正歯科治療とは「健康に裏づけられたエステティックに美しい顔と口元、および美しい歯並びをつくり出す医療である」とし、機能的な改善だけでなく患者個々にあった審美的な改善を目指すべきと述べた。また、補綴歯科と連携したベーシックな症例、口腔外科と連携してリカバリー治療を行った難症例など幅広い治療例を示しながら診断・分析時の要点を解説し、さらに各矯正装置のフォースシステムやバイオメカニクスの違い、得意・不得意な移動についても総括した。
最後の総合ディスカッションでは、矯正歯科治療のゴールの設定、中切歯切縁の位置決定時の注意点、補綴治療開始までの保定期間の長さ、下顎歯列弓の側方拡大量に応じた上顎拡大装置の使用などについて次々と質問が挙がり、会場の参加者も巻き込んだ白熱したディスカッションが行われた。