社会|2025年4月1日掲載

「不正咬合は予防できる~予防への扉を開く保育歯科~」をテーマに

子どもの咬合を考える会、第28回特別講演会を開催

子どもの咬合を考える会、第28回特別講演会を開催

 さる3月30日(日)、京都テルサ テルサホール(京都府)において、子どもの咬合を考える会第28回特別講演会(白石千栄子大会長、西田尚人会長)が「不正咬合は予防できる~予防への扉を開く保育歯科~」をテーマに開催され、400名を超える参加者を集めた。

 本会は、子どもの咬合や歯列に異常をきたす原因を知り、できるかぎり早期に適切な対応を行うことにより、子どもの健全な咬合育成を促すことを目的に、咬合育成に関する学習・研鑽を行うスタディグループである。今回の特別講演会は、講師として歯科医師であり、保育士、介護支援専門員の資格ももつ藤原康生氏(熊本県開業)を招聘し行われた。

 総合司会の小石 剛氏(大阪府開業)による開会宣言、白石大会長による開会の辞に続いて、「小児の不正咬合はいつから予防すればよいのか~0歳からの口腔調査で判明した不正咬合の原因と予防~」と題した藤原氏の講演が行われた。

 藤原氏はまず、不正咬合の子どもが増えている現状を述べ、その原因といつから不正咬合が始まるのかを調べるために保育園で行った調査の結果を紹介。口腔内だけでなく全身(姿勢)や足指の写真、フットプリント(足形)、構音検査、ミールラウンドなどの項目を毎年記録・調査し、経過を追っていったところ、過蓋咬合や叢生などの不正咬合の有無は乳前歯が萌出するころにはすでに決まっており、不正咬合を予防するカギはその前の段階、つまり哺乳期にあると述べた。

 子どもの成長・発達には、器官や機能ごとに感受性期とよばれる成長のゴールデンタイムが存在し、それは一生に一度しか来ず、そのときに獲得できなかったものはその後も獲得することができない。上顎骨の感受性期は0~2歳であることから、生まれてから歯が生えるまでの数か月間が子どもの歯並びを決めているといえる。そのため、この時期に哺乳によって口腔に適切な刺激を与えること、また歯のない時期からの口腔育成支援を歯科が行うことが、不正咬合の予防とその後の口腔および全身の健康維持につながると強調した。

 この他にも、過蓋咬合と呼吸や構音障害との関係、口腔と足の成長および姿勢、全身のバランス感覚の関係などを解説。また、感受性期を過ぎた子どもへのアプローチとして、「前歯がぶり」「ブクブクトレーニング」「あいうべ体操」「チューブ噛み」などの筋機能訓練や「前歯を使って噛む」「食事のときは足の裏をしっかり地面につける」「水やお茶は食後に飲む」の3点を中心とした食育などを紹介した。

 講演の最後には、「子どもの咬合を本気で考えるなら歯科が保育の世界に介入するしかなく、今回の講演でお伝えしたことを念頭に置いて、皆で取り組んでいきましょう」と呼びかけた。

 講演終了後は、会長の西田氏が閉会の辞を述べ、成功裏に終会となった。なお、講演のほかにも会員によるポスター発表が行われ、そちらも盛況であった。

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