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2022年5月号掲載

医療資源の有効活用を目指す

自身の健康状態を「見える化」するサービスを提供したい

 1990年から歯科界に携わり、30年以上にわたって主たる事業軸を医療に据えて活動してきた今井義博氏。本欄では、氏が理事長を務める一般社団法人健康促進開発機構のミッションとコロナ禍における取り組みについてうかがった。

今井:近年では口腔の健康と全身の健康の関係についてさまざまな研究データが出され、歯や口に関する国民の関心や興味が高まってきました。現代社会における生活環境が日々変化しているなか、特に2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大によって、これまで当たり前だった生活環境が激変し、新しい生活様式の中で心身の健康を保つことが求められていると感じています。

 コロナ禍における制限された活動のなかで私たちの生活習慣を正常化することは困難な状況です。健康な状態と病気の間にある「未病」を改善することによって健康寿命を延ばすことがこれからの社会に求められます。とはいえ、感染の予防と自身で健康を管理するには限界がありますし、また健康管理と一括りにいっても「何を、どう管理すれば良いのか?」など、明確にする必要があります。

 そこで、当機構では健康に関するさまざまな情報が混在するなかで、医療資源の有効活用を目的とし、自身の健康状態を知る「見える化」することを目指すべく業界の第一線で活躍する医師や歯科医師の協力のもと、血液解析ナビゲーションシステム「B-Navi システム」を開発しました。血液検査データを基に独自のデータ解析によるアドバイスを行い、医療機関と患者さんをつなぐことで生活習慣における改善のサポートを行っています。

 また、歯科においては近年ではDX化が注目されていて、コロナ禍でその動きはますます加速していると実感しています。たとえば、歯科医院の受付業務の1つである問診票記入に関して、不特定多数の方が手に触れることによる感染リスクや、記入の際に使用した筆記用具などの消毒作業時間の課題があります。そこで、それらの課題を少しでも解決するために、患者さん自身のスマホから入力できる問診票記入支援サービス「Quick問診(スマホ問診票)」を2021年3月にリリースしました。本サービスの開発ポイントは、ITリテラシーが低い方でも気軽に利用でき、皆さんに広く使用していただくために月額500円と価格にもこだわりましたので、ぜひご活用いただければ幸いです。

 歯科医療従事者の皆様はすでにご存じのとおり、わが国の「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針2021)」には今後歯科の果たすべき役割が明記され、歯科に対する期待の大きさが示されています。

 これからの歯科医院のあり方として、治療中心型ではなく予防・管理中心型として、患者さんの健康のゲートキーパーになることが必要です。当機構は、そのような視点から歯科医療従事者をはじめとする皆様に役立つさまざまなサービスを提供していきたいと思います。