2022年12月号掲載
歯科医師初のESPEN Diplomaを取得した
ヨーロッパ臨床栄養代謝学会(以下、ESPEN)の医療者を対象とした栄養教育プログラムである「Life Long Learning(以下、LLL)programme」。2022年9月に開催された最終試験において光永幸代氏(神奈川県立がんセンター歯科口腔外科医長)が歯科医師初となるESPEN Diplomaを取得した。本欄では、氏にDiplomaを取得した目的や今後の活動・展開についてうかがった。
光永:Diplomaを取得するには、LLLプログラムの中でオンラインとライブコースの両方で必要単位を取得したうえで最終試験に合格する必要があります。国内のライブコースは日本語の講義を受けられますが、オンラインの資料やテスト、海外でのライブコースはすべて英語なので母国語以外の言語で学習することに難しさもありました。ただそのおかげか、英文読解力の向上を感じています。
私は2020年には受験資格に達したのですが、この年はコロナ禍で最終試験が開催されませんでした。次の試験がいつ開催されるかわからない状態で学習を継続するモチベーションが維持できず、2021年にオンライン形式で再開された最終試験は不合格でした。しかし、この失敗で「幅広い範囲から理解度を問われるもの」とヤマが張れないことを痛感しましたし、学習方法を切り替えられたことが今回の合格につながったように思います。
ESPENのLLLは、臨床栄養に関する世界共通の知識が集約されたコースといえます。法制や文化の違いからすべてを日本の臨床に応用することはできませんが、目指すべき方向・概念を理解する一助にはなります。また、LLLの教材は世界中から発信されたエビデンスを基に構成されているため、臨床研究の視点でも「何がどこまで、どの程度のエビデンスレベルで明らかにされているか」をタイムラグなく知ることができます。この道標をたずさえて、臨床・研究ともに切り拓いていく機会につなげたいと考えています。特に、現時点では口腔領域と栄養の関連について明記されている部分が少ないので、歯科領域からの発信が掲載されることを目指し、研究活動のアクティビティを高めるべく一歩ずつ取り組みたいと思います。
最終試験に合格したことで当初の目標は達成しましたが、「生涯学習」としてLLLへのチャレンジは今後も続けていきます。LLLを通じて臨床栄養という共通テーマで勉強や研究に励む多職種の仲間とつながれたことも、自分にとって価値のあるものでした。LLLのオンラインコースは無料で受けられるので、アカウントをつくって興味のあるトピックだけでも開いてみてはいかがでしょうか? また、臨床栄養に関する学びへのモチベーションを高め合える仲間を見つけるうえでも日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)への入会をお勧めします。JSPENのホームページでもLLLの概要について紹介されていますので、ぜひご参照ください。
https://www.jspen.or.jp