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2020年7月号掲載

新型コロナウイルス感染症対策チームの「顔」

新たな歯科システムへの「入口戦略」として取り組みたい

 新型コロナウイルスの感染拡大予防に対して、エビデンスに基づく正しい情報を発信しつづけている(一社)日本歯科医学会連合(住友雅人理事長)。このほどホームページで公表された「コロナ時代の新たな歯科システムを」では、コロナ時代の指針となる新しい感染予防システムを提言している。感染症からの「出口戦略」が求められるいま、本欄では新型コロナウイルス感染症対策チームのリーダー、小林隆太郎氏(日本歯科大学教授)にお話をうかがう。

小林:これまでだれも経験したことのない新型コロナウイルスのパンデミックに対して、エビデンスに基づいた情報をいかに的確に伝えていくかがスタートでした。患者さんに安心して診療を受けていただくためには、歯科医療従事者側が正しい知識をもつことが大切です。しかし情報の発信元が患者さんと歯科医院経営のどちらかに偏ってはいけませんので、法人格をもつ組織として独立性のある日本歯科医学会連合がその役割を担うことになったことは、とても意義があると思います。

 今回の提言では、①診療②診療環境③スタッフの3点に関する留意点を示しています。①と③は私たち医療従事者側が気をつけることであり、②は患者さんへの安心のメッセージの意味も含めています。これからの歯科診療においては、引き続き標準予防策(スタンダード・プリコーション)の徹底に加えて3つの密への対策、たとえば待合室での密集を回避するため予約間隔の管理をしたり、定期的に窓を開けて換気をしたりするといったことも重要です。また、ウイルス感染に対抗するためには「口腔健康管理」も欠かせません。新型コロナウイルスについては多くのことが検証段階ですが、日頃から口腔内を清潔に保つことがインフルエンザ予防につながることは広く知られています。こうした新しい習慣、ニューノーマルを実施するほか、待合室に窓のない診療所は空気清浄機の設置を検討するといった工夫も望ましいでしょう。しかし、ひと口に空気清浄機といっても性能の違いや天井設置か床に置くのかでも考え方が変わってくるため、今後は環境学や医科の分野と意見交換しながら感染予防対策に取り組む必要があると思っています。

 新型コロナウイルスは地域によって感染の広がりに大きな差があるため、各地域の実情に合わせた工夫を取り入れていくことも大切だと感じました。とはいえ、感染対策を実践するにあたり衛生用品の購入費用といったコストの問題もあるので、そうした「物の供給」にどう対応するかもこれからの課題です。

 国が求める「新しい生活様式」を実践すべく、社会全体が元の生活に戻るための工夫をはじめています。出口は逆に入口でもあるため、「入口戦略」というかたちで、新たな感染予防策を含めた歯科医院の環境全般を見つめ直す良い機会だと思います。歯科医療従事者はもとより、患者さんも安心して口腔健康管理を実践できるよう、正しい情報の発信に取り組んでまいります。