学会|2025年3月4日掲載

「近未来の補綴修復治療について語ろう」をテーマに

日本臨床歯科学会東京支部 2024年度 第3回例会開催

日本臨床歯科学会東京支部 2024年度 第3回例会開催

 さる3月2日(日)、赤坂インターシティコンファレンス(東京都)において、日本臨床歯科学会東京支部2024年度 第3回例会(日本臨床歯科学会東京支部主催、大河雅之会長)が開催された。

 今回は、大河会長(東京都開業)がプログラムチェアマンを努め、「近未来の補綴修復治療について語ろう」をテーマに設定。以下に示す4名の演者が「マキシロフェイシャル補綴修復治療って何?」と「低侵襲とデジタルで補綴修復治療はどう変わる?」をサブテーマに相次いで登壇した。以下に演者・演題および概要を示す(講演順)。

1)「補綴修復治療におけるデジタル技術の活用法」(岩田 淳氏、兵庫県開業)

 冒頭に登壇した岩田氏はまず、補綴修復治療においてデジタル技術の活用を図ることのメリットとデメリットについて考察。前者としては、遠隔地とのデータの共用や支台歯形成におけるマテリアルスペースの詳細な確認などについて挙げ、後者としては3Dプリンターによる表面性状再現の困難さやエッジロスの問題、および歯肉縁下の光学印象採得の困難さなどについて多くの症例や資料とともに示した。そのうえで、米国版「QDT 2023」に掲載された症例を供覧。「Digital and Analog Approach for Precise and Predictable Restorative Treatments」と題したその症例から、デジタル技術は最大限に活用しつつも、アナログだからこそ発揮できる術者の技術を組み合わせていくことが今後も重要であるとした。

2)「気道に配慮した歯科治療についての考察」(吉田茂治氏、埼玉県開業)

 かねてからAirway dentistryの臨床に携わってきた吉田氏はまず、「Facially generated treatment planning」をキーワードに、顎顔面全体を考慮した治療計画の重要性を強調。気道の問題が疑われる患者の顔貌的特徴や、セファログラムでコントロール群と比較したOSA(閉塞性睡眠時無呼吸)患者の特徴、そして気道の問題が疑われる歯列の特徴や問診票の活用法などについて示したうえで、2つの症例を基に実際の臨床について解説。いずれも上顎拡大装置を適切に用い、鼻腔通気度や舌圧の改善、そしてもちろんAHI(無呼吸低呼吸指数)が減少した実例を示した。

3)「Clinical guidelines for managing complex restorative patient」(山﨑長郎氏、東京都開業、日本臨床歯科学会理事長)

 本演題では、1979年に山﨑氏自身が手掛けた症例を皮切りに、氏自身、そして日本と世界の歯科界が歩んできた道のりを多数の症例とともに概観。1970年代はナソロジー、1980年代は歯周補綴、1990年代はインプラント、2000年代は審美、2010年代はデジタルデンティストリー、そして2020年代は睡眠歯科がキーワードになってきたとし、それぞれの時代の症例を多数供覧。そのうえで、「2020年代以降のトピックスはまだ見えてこないが、歯科臨床の細部は過去からまったく変わることはない。どの時代にも、歯科医師としての素養を磨くことが重要」と締めくくった。

4)「デジタル時代におけるベニア支台歯デザインの考え方」(大河氏)

 最後に登壇した大河氏は、「MI、マイクロスコープ、デジタルデンティストリーの3点が、現在の補綴修復治療の必須事項である」としたうえで、それぞれの内容を概説。その後これをふまえ、「デジタル技術がラミネートベニアのプレパレーションデザインにどのような影響をもたらしたのか」および「デジタル臨床の実際」について詳説。前者では、デジタル化に対応したラミネートのためのフェザーエッジプレパレーションの重要性や専用バーの開発、CAD設計時の内面適合を高めるためのテクニック「ISF」(Inner Surface Fitting Correction)の解説、また著書『イノベーション・オブ・ラミネートベニア』(2024年、小社刊)の中でも示されたベニアの支台歯形態の分類などについて示した。また後者では、大河氏が分類した支台歯形態を応用しつつ、さらに1歯の中で部位に応じて複数の形態を付与した症例を供覧。これにより、よりいっそうの低侵襲と確実な設計・製作、そして接着が得られることを動画も含めてわかりやすく示した。

 なお講演後、会場では今年度で任期を終える大河会長および北原信也副会長(東京都開業)に対し、次期会長の西山英史氏(東京都開業)から花束が贈呈された。また、その後行われた懇親会では歴代の東京支部会長が相次いで登壇。それぞれの任期ごとのエピソードやこぼれ話で盛り上がりを見せていた。

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