2024年5月号掲載
「保険は学問」に我想う
日本歯科医師会の会長が「保険は学問」だと発言したそうだ。今回の診療報酬改定が複雑だとの会員の声を受けてとのことである。ところで、本改定の主なポイントのいちばんは、「人材確保や賃上げ等への対応」である。30 年ぶりの高水準の賃上げの状況という社会情勢を受けた特例的な対応のようで、事業主としては歓迎ムードなのだろうか。また、治療よりも管理の方が大きく評価されるようになっていることも挙げられる。歯科診療のニーズの変化を考えれば、これも歓迎しないといけないのだろう。
賃上げのための増点は、実際に賃上げするだけでなく、かなり複雑な条件を満たさなければならない。また、管理の点数を算定するためには、実際の診療で何をするかということではなく、多くの施設基準を満たす必要がある。どちらも実際の診療行為・技術は問われず、サイエンスにかかわるものでもない。「保険は学問」といわれても腑に落ちないのは私だけだろうか。
保険導入される医療技術は、もちろん学術に基づくものでなければならない。その点では「保険は学問」であるべきだが、実態はそこから離れていくばかりである。さらには個々の点数貼り付けをみると、あいかわらずの「あっち上げ、こっち下げ」である。改定率が1%に届かず限られた財源の状況下では、そうせざるをえないのだろうが、これもまた釈然としない。
日常の診療で長く働いても今回の賃上げの対象外の個人事業主としては、「なんだかなぁ……」とぼやくしかない。まもなく6月を迎えるが実感はない。