社会|2024年2月4日掲載
S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)
菊谷 武氏による特別講演が開催され盛会となる
今回は外部講師として招聘された菊谷 武氏(日本歯科大学教授、同大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長)による特別講演「要介護者にとって歯はないほうがよいのか―高齢者歯科パラドクス―」が行われた。
冒頭、菊谷氏は、多くの日本人が75歳前後を境に、要介護状態まで自立度が低下していく老化の過程について解説。健康寿命と平均寿命の差を示しながら通院不可能な期間があることを説明し、口腔機能検査からフレイルリスクを診断することで、来院可能な期間を延ばす重要性について述べた。
次に、「残存歯数と生命予後の関係性」について、要介護高齢者に限定した多数歯は唾液中の細菌増加に影響を与えることを示すデータを供覧。「歯が多く残った状態で口腔ケアが行えなくなることは、誤嚥性肺炎のリスク因子となる」と述べ、後期高齢者を中心に外来の時から訪問歯科での対応を想定した口腔状態を意識する必要性を解説した。そして、「疾患リスク歯は抜歯も必要な治療」と歯を残すことが必ずしも最善策でないことを訴えた。
最後の質疑応答では、参加者が臨床で感じている課題や疑問が多数寄せられ、菊谷氏がていねいに解説。なかでも訪問診療で対応が難しいケースについては、「環境や自身の力量で治療方針を決定するのではなく、患者に対して最適な治療を提案してほしい」とのメッセージが送られた。